第4章 体育祭、それぞれの準備
(最近、こんなんばっか…)
この間も二人で帰宅した日―――かっちゃんがデクくんの前で悔涙を流した日も、何も言ってあげれなかった。
USJ襲撃事件の日は、逆に私が取り乱して慰められてしまった。
(今だって……)
“かっちゃんが言ったモブ、ザコって言葉に傷ついてないよ!体育祭、頑張ってね!”―――って、言えば正解?
(…それも、違う気がする)
私が傷ついた事に、かっちゃんは多分気付いている。“大丈夫だよ、平気だよ”って言うべきなんだろうけど、そんな事を言える雰囲気ではなくて。言葉が喉の奥で支えてしまう。
(…年上ぶってるくせに。
頼りないなあ、私)
伝えたい想いは沢山あるのに、何一つ言葉でにできない。
力になってあげたいのに、いつも肝心なときに何もしてあげれない。
(……今までこんなこと、なかったのに)
帰路の途中にある、家電製品店の前を通る。
ガラス越しに映るかっちゃんと自分。
自分よりも頭1つ分高い背、何回りも大きい体格、太い腕……
この間、学食で背比べをして私が負けたではないか。
いや、違う。
もう中学生の頃には“全て”追い抜かれた事なんてわかっていた、のに。
(こんなにも、違ったなんて)
改めて差を思い知らされる。
いつまでも私と同じくらい…いや、小さい頃のままだと、何も変わらないと思っていた。
(第三者の視点になって、やっと気づくなんて)
それに、何気なく歩いていたが。
かっちゃんが大通り側の道を歩いていて、私が人とぶつからないように。さり気なく、誘導してくれている……気が、した。
「…ッ」
(なんか、嫌だ…っ)
むずむずする
感じたことない、違和感。
かっちゃんと自分の色んな“差”が、顕著に現れた気がして。
あぁ、自分はやっぱり“モブザコ”なんだなあって。むしろモブにもザコにも当てはまらない、道端の石ころだなあって。
ガラス張りの前で愕然としている私の向こう側には、沢山の最新型テレビが所狭しに並ぶ。テレビ達は先日のUSJ襲撃事件のニュースを放送していた。
“USJ襲撃事件”
つい二日前のこと。
あんなに取り乱した事件だったのに、私の頭は1-Aでの出来事…体育祭で頭がいっぱいだ。