第4章 体育祭、それぞれの準備
(かっちゃんの、手…!)
先程あんな事があったばかりなのに。
私は呑気にかっちゃんと恋人繋ぎをしている手の事ばかり考えてしまう。
いや、それしか考えることができないくらい余裕が、ない。
最初はズンズン歩いてたかっちゃんだが、次第にスピードが緩められ、僅かな力で手を引かれている状態だ。
(かっちゃんの手、大きいな…)
指も太くごつごつしてて、自分の指を絡めにくい。
彼の個性の関係もあるだろうけど、手の皮も分厚そうで、とても逞しさを感じる。
(…逞しい?)
私の手を引いている、かっちゃんの後姿をふと見上げる。
そう言えば。
いつから、こんなに逞しくなったのだろう?
いつから、かっちゃんをこんな風に見上げるようになっていたのだろう?
(あれ…?)
よくよく、彼を見れば。
肩幅もこんなに広かったっけ。身体も筋肉で厚みがある。腕だって、制服の上からでもがっしりしていることがわかる。
体格差でいえば、私なんて到底敵わない。
(私が、敵わない…?)
デクくんをいじめるかっちゃんを抑えるのは、昔から私の役目。だけど、もう私が抑えられるような体格…存在ではなくなっていた。
気がつけば、かっちゃんはこんなにも逞しい男子になっていた。
(男子…?)
“男子と、恋人繋ぎ”
「―――…っ!!」
そう考えたら、急に、ぶわっと。
身体中の血液が沸騰したような熱さを感じた。
特に顔から、熱を放っている気がする。
「か、かっちゃん…っ!」
手、変な汗が出てきた気がする!
そもそも手汗かいてるかもしれない…!!
女子として、なんか、それは、いやかも……ッ
なおさら恥ずかしい…!!
「あっ、あの…!!」
“恥ずかしいから 手、離して”
そもそも手を繋ぐ必要性なんて無い
「……なんだよ」
そう一言、言えば済むことなのに。
かっちゃんを、見たら。
なんか、離すの。嫌だなって。
それに、そんなこと言ってしまったら。
簡単に、この手……私から遠く離れてしまうのではないか。そう思ったら。それ以上は何も言えなくなってしまった。
「…や、別に……」
「「………」」
沈黙が重い。
何を話せば良いかわからない。