第4章 体育祭、それぞれの準備
「あ、アザミさん!ちわーッス」
「やっほ、切島くん!」
「…オイ」
「あっ、お茶子ちゃん!昨日のテレビ見た?!」
「もちろん見たよ!いいトコで終わって続き気になるんやけどー!」
「オ、」
「あっ、アザミ姐さんじゃん!
まーたうちのクラス来てん…」
「なんッッッッでテメェがいんだよ!!!
アザミ!!!!!」
「わっ……ちゃん!!
もう、びっくりしたなあ〜」
アザミは爆豪の怒声に驚きつつも怯みはしない。
「なんか、すっかり1-Aに馴染んでるよね。アザミちゃん」
「テメェに話しかけてねーよ!!
クソナードがァァァ!!!」
「ヒッ」
「こらっ!デクくんにちょっかい出さなぁーい!!」
「あ"?!元はと言えばテメェが…!!!」
USJ襲撃事件から二日後の放課後。
雄英高校は臨時休校となるも、学生達のおかげで今は賑やかな活気で溢れている。
恐ろしい事件後ではあるが、1-Aでは幼馴染3人による騒がしいやり取りが繰り広げられていた。もはや珍しい光景ではなくなりつつある。
…否、それもいかがなものだろうか。
「デクくんも!かっちゃんにやられっぱなしじゃ駄目だよ!?」
「ぅ、ん…!」
「“うん”じゃねぇンだわクソナードッ!!!!!」
爆豪に威嚇されるとビビってしまうのは、幼少期から刷り込まれた哀しい性だ。
既に条件反射となっており緑谷の体は勝手に縮こまる。そしてアザミに庇われる始末だ。
しかし、緑谷は怯えつつもニヤけそうになる口元をキュッと結ぶ。内心はアザミに庇ってもらえるこの状況が嬉しかったり、する。
「!、テメェ…この状況で何ニヤついてんだァ?!」
「な"?!何言ってんだよ、かっちゃん…!」
(ど、どうして分かったんだろう…?!!)
「舐めとんのか?!あ"ぁ?!」
「何わけわかんないことでキレてるの!どうどう!」
「……俺は馬や牛じゃねンだわッ!!!!」
暴れ馬(牛?)状態の爆豪を宥めるアザミを余所に「やっぱり嬉しいなあ、良かった」と思う緑谷だった。
(この状況が嬉しいなんて口が裂けても言えないけど…
アザミちゃんと仲直りできて、本当に良かった…ッ!!)
緑谷は人知れず、ほろりと静かに涙を零した。