第3章 《僕》のオリジン
―――デクくんの頑張ってる姿に、いつも励まされている。
(……なんて、絶対に言えない)
個性がある自分が、無個性であることにもがき苦しんでいる彼に助けられているなんて。伝えて良い言葉だとアザミは思えなかった。
「はぁ…は…、どこに、いるの…っ!」
アザミは一番大きなゴミ山を乗り越える。するとゴミ山の中心部は綺麗になった砂浜があり、そこに仰向けに寝そべっている人影が見えた。
(本当に、人がいた…!!!)
噂が事実だった事に驚く。
その人物に目を凝らす必要なんてなかった。何故なら、彼はどう見ても……
「デクくん…?」
「…ん…アザミ、ちゃん?」
「…デクくんッ!!!」
アザミは倒れている緑谷に急いで駆け寄り、彼の隣に座り込む。
「デクくん!!こんな時間に、こんなとこで何やってるの…!?大丈夫?!」
「…アザミ、ちゃん……」
緑谷はぼんやりと寝ぼけ眼なものの、しっかりと返事をする。どうやら怪我等はしていなさそうだ。
(………ッ、よかっ、た!)
アザミは安諸するも、緑谷の姿に胸が苦しくなった。暗がりの中、目を凝らすと彼はボロボロで酷く疲労困憊していた。
(私が、安易に“頑張れ”なんて言ったから…
こんなに、無理、したのかなあ…っ)
「デクくん、ほんと大丈夫…?!」
「…うん」
ごめん
ごめんね
「ねえ!デクくんったら、…」
大丈夫だよって、
いつもみたいにちゃんと返事してよ
「アザミちゃん」
「―――、えっ?」
あまりにも力強く、そして優しく
私の名前を呼ぶものだから、出かけた涙も引っ込んだ。
「デクく…―――――?」
グイッ
手を引かれたと思った次の瞬間。
アザミは緑谷の薄い胸板にポスッと顔をぶつけ、その細腕からは考えられない力強さでぎゅうっと抱き締められていた。
「えっ、ちょ、デ………
……………デクくんっ?!!」
今はどうゆう状況なのだろうか。
(デクくんに、……男子に、このように抱き締められるなんて!!
あれ、私はデクくんを探しに来て…それでっ…!!)