第3章 《僕》のオリジン
(怖かった…!)
走っても走っても全然追いつけなかった。
これ以上、置いていかれてしまうんじゃないかって。置き去りにされるんじゃないかって。
僕から離れていくアザミちゃんは笑っているのに、とても悲しそうで。そんな君に何もしてあげられなくて。
「デクくん…?」
「…アザミ、ちゃん」
嗚呼、まだ夢を見ていたようだ。
倒れている僕の顔をアザミちゃんが覗き込んでいる。
「デクくん!こんな時間に、こんなとこで○○○、✕✕✕…?!」
「…アザミちゃん」
アザミちゃんはとても驚いた顔をしたかと思えば、僕の隣に座り込み何か言っている。
先程のように僕から遠ざかっていかない。
「デクくん、聞こえる?大丈夫…?!」
「…うん」
不謹慎だけど、嬉しくなってしまった。
アザミちゃんが僕の傍に居て、心配してくれている。
だけど、また遠くに行ってしまうかもしれない。僕を置いて、悲しそうに笑うかもしれない。
「ねえ!デクくんったら」
「アザミちゃん」
もう逃さない
悲しませない
「デクく…―――――?」
―――――ぎゅっ…
僕はアザミちゃんの手をグイッと引っ張る。
ポスッと僕の胸に顔をぶつけるアザミちゃんを腕の中に閉じ込めるように強く抱きしめた。
そして、アザミちゃんに置いてかれた惨めさ。アザミちゃんを悲しませた不甲斐なさを払拭するために、僕は誓おう。
「僕は、必ず
君に追いつくよ」
せめて、夢の中だけでも
少しだけ格好つけさせて。