第3章 《僕》のオリジン
事の始まりは中国軽慶市
発光する赤子が生まれたというニュースだった
以降各地で《超常》は発見され、原因も判然としないまま時はながれる
いつしか《超常》は《日常》に
《架空》は《現実》に!!!
世界総人口の約8割が何らかの《特異体質》である超人社会となった現在
人はそれを個性とよんだ
―――これは齢4歳にして知った社会の現実。
「ひどいよ、かっちゃん…!泣いてるだろ…?!
これいじょうは、僕が許さゃへなぞっ」
友達を庇うため、僕は幼馴染みでガキ大将のかっちゃんに握り拳を向けて立ち向かう。
……庇う友達よりも涙目になり、ガクガクと震えながら。
「“無個性”のくせに、ヒーロー気取りかデク!!」
かっちゃんは己の個性を発動させ、ボムッと掌から小さな爆破を起こし威嚇する。
その威嚇は僕にとって十分効果抜群だ。
「ひっ!」
その爆破を合図に、かっちゃんとその取り巻き達が一斉に僕に襲いかかる。
予想を覆すことなく僕はこてんぱんにされ地面に大の字で倒れ込む。
格好をつけたかった訳ではないが、虐められる友達を助けなければと思った。しかし、無個性の僕が有力な個性のかっちゃんにやっぱり敵うわけがなかった。
「た、たすけてなんて、言ってないからな…!」
そして庇った友達にはこんな事を言われ、取り残されてしまう始末。
あぁ、僕はなんて無力なんだろう
弱くって、情けなくて、なんて格好悪いんだろう…ッ
「やーい!無個性、無個性ー!」
「かっちゃんに勝てるわけないだろー!」
体と心が痛くて起き上がれない。
僕の心境と相反に、見上げる空はどこまでも広大で青々としている。
―――これは、僕の最初で最後の挫折だ。
「こらーぁっ!!!」
「ちっ、なんでてめえがくるんだよ!
アザミ!」
「デクくんをいじめないの!!
…デクくん、だいじょーぶ?!」
アザミちゃんはかっちゃんの前にたちはばかり僕を庇う。僕が先程起こした行動と全く同じ事をするアザミちゃんはヒーローみたいで、とても様になっている。
この差は一体なんだろう。
「ッ、う、うるせー!!次はねぇからな!デク!!」
かっちゃんは不思議なくらい動揺し、捨て台詞を残して取り巻き達と共に去っていった。