第2章 USJ襲撃事件
「…かっちゃんさ、この間言ってたじゃん。
私に、なんでヒーローになるの辞めたんだって…」
「………あぁ」
どうやらこの返答であっているようだ。
アザミは言葉を選ぶようにぽつりぽつりと話す。
「ヒーロー科に進んでたら、私。もっと自分が嫌いになってたと思う…」
「この前は、んなこと言ってなかったじゃねぇーか」
「…ぅ"」
「嘘ついてんじゃねェぞコラ、あ"ぁ?」
「ご、ごめん…!」
「アザミの考えそうな事なんか、お見通しなンだわ!」
「見くびんじゃねぇ!!」と物凄いドスの利いた声で爆豪はアザミを脅す。アザミの肩が小刻みに震えるも、それは―――。
「…ははっ!」
「笑ってんじゃねーぞオイ!!」
「いや、だって!安心しちゃって!いつものかっちゃんすぎて!!ははっ…
は…―――お見通し、かぁ」
「当たり前だボケ。テメェは分り易すぎんだ」
「そっかぁ、かっちゃんに嘘つけないや」
「するだけ無駄だ」
「そっか…でもね、
実力がなかったっていうのは、ほんと。
ヒーローになるための…強い気持ちの、ね。
……だから、私の選択は間違ってないよ」
「そーかよ」
「うん…」
「…」
会話が途切れなんとも言えぬ無言が続く。二人は互いに視線を合わすこともなく爆豪は廊下を、アザミは窓の外をぼんやりと眺める。
しかしこの無言は互いに居心地の悪いものではなく、いつまでも続けばいいとすら思えてしまうような空気感だった。
「―――俺は、」
爆豪が無言をぶち壊す。
「俺は、ヒーローになる」
「………うん」
(やっぱり、ヒーローになっちゃうんだ…
そりゃそうだよね、でも…)
かっちゃんが痛い思いをするのは嫌だ。
怪我もしてほしくないし、怖い思いだってしてほしくない。
そんな未来が待ち構えているのなら、ヒーローになってほしくない。
「敵との遭遇は遅かれ早かれすんだ」
「だけど…ッ」
せめて、まだ今じゃなくていいではないか。
ヒーローになる準備どころか、まだ入学し間もない高校1年生だ。
「もし、敵に…!!」
負けちゃったら…っ?!
どうするの?