第2章 USJ襲撃事件
* * *
『なぁ!俺らの学年のヒーロー科、誰が凄いヒーローになると思う?』
混雑時の食堂に、よく響き渡る声でそんな話題がアザミの耳に聞こえてきた。
(ここで話す?ちょっと嫌な感じ…)
経営科でよくあるあるの予想ゲーム。
決して悪いことではない、むしろ経営科には必要な事である。
しかし、生徒の名前を出すようなゲームはこのような公共の場では控えるべきだ。
『ん〜とりあえず、アイツはありえなくね?透過する奴!』
(え、それってミリオじゃ…)
『あの個性じゃ、経営科の俺等の方がマシだろ!!』
(…は?)
通形本人が近くにいるにも関わらず、経営科の生徒が嘲笑う。
『…アハハ』
アザミと目が合った通形は少し困ったように笑うだけだった。
『…ねぇ、ちょっといい?』
『ん?何か用?猫柳』
アザミはスゥと息を吸い込み、勢いよく言葉を吐き出した。
『ミリオは!!凄いヒーローになるよ!!!!』
バァァァーーーン!!と効果音が聞こえそうなくらい大きな声で宣言するアザミに、彼等は若干…いや、周囲はだいぶ引き気味だ。
『は…はぁ?根拠は?あんな底辺まで落ちた奴…!』
『落ちたらもう、後は上にあがるだけ!投資や株じゃ、買い時!常識でしょ?』
『じゃあ、その上がる根拠は?』
『根拠はミリオの人望と…』
『『人望と?』』
彼等と遠巻きに見守る通形は、アザミの次の言葉をゴクリと生唾を飲んで待ち構える。
『……感!!!』
『『はぁ?!』』
『だから、感!!私の直感!!!』
ズバァァァーーーン!!!と効果音が出そうなくらい自信満々で言い切るアザミに呆れつつも、圧倒される経営科の彼等。
『な…なんだよ!それ』
『時にはそうゆうのも有りでしょ?』
『いや、無しだろ!』
『とにかく!ミリオは凄いヒーローになるの!!
ミリオっ!!!自主練行こう!!!』
『『『?!』』』
経営科の彼等は『げ、本人居たのかよ』という顔をし、通形は『そう、俺居たんだよねー!』と困り笑顔でアハハと頭をかく。
アザミは通形の腕を掴みズンズンと食堂を出ていった。
『なんで、ミリオは怒らないの?』
『いやー…本当のことなんだよねー!』