第6章 体育祭、それぞれの想い
夢か真か
自分が切望するあまり作り出してしまった幻聴か
アザミはそれを確認する術もなく立保受けしていると空から聞き慣れた声が降ってきた。
「アザミー!!やったねー!!」
「予選通過おめでとー!」
観客席から身を乗り出さんばかりにアザミに手を降る2人の友人の声だった。
友人達の嬉しそうな顔が、アザミに投げかける声が。彼女が予選通過者であることを告げる。
嗚呼、夢じゃなかったんだ
本当なんだ
「経営科がヒーロー科を抜いて予選通過かぁ!」
「何年ぶりだろうね、ヒーロー科じゃない他科が通過するの!」
「猫柳ー!お前凄いな!経営科の代表な!」
友人達やクラスメイト、観客席からの声援が。夢でもなく幻聴でもなく自分が予選通過者であることを実感させてくれた。
「へ、へへ……やったぁ…っ!」
まだ予選を通過しただけのこと。これからが始まりだというのに既にボロボロでクタクタだ。そう思うものの、アザミは嬉しくて仕方がなかった。
今まで頑張ってきたことが、捨てられなかった想いが報われたような気がした。
アザミの目には涙が滲み、視界がぼやける。目に映る世界がキラキラと光り輝いて美しい。
しかし、アザミに余韻を浸る間は無かった―――――
「ズルいんじゃねーの?」
たった数人、否。
たった1人の男子生徒の声にアザミは歓喜から醒める。
「―――…え?」
声の主の方へ振り向くと、経営科の男子生徒であった。その男子生徒とは、まだ一学年だった頃食堂で通形の個性を馬鹿にしいた人であった。
「みんな自力で完走してるのに、他人にへばりついてゴールとか、どーなの?」
「そ、れは…」
アザミは深く俯き黙りこくる。
自分でもそう思う節があるからこそ、返す言葉がなかった。彼の言葉がナイフとなりアザミの心を抉る。
「そんな方法で予選通過して、経営科の代表?
何でもありの競争だからって、それは無しでしょ」
「…っ」
「流石にセコすぎ」
アザミは何も言えず、火照っていた身体がつま先からどんどん冷えていくのを感じていると―――
「そんな訳ないだろ」