第6章 体育祭、それぞれの想い
「予選通過者の発表です!」
主審である13号先生の声がマイク越しに会場に響く。アザミはどきどきしながら予選通過者が掲示されるモニターを見上げた。
「っ、はー……っ」
………どうか。
どうか、自分の名前が呼ばれますように。
アザミは緊張で力が上手く入らない手をぎゅっと握り、祈る。
障害物競走は我武者羅だった。
こんなにも必死になって何かを成し遂げたことがあっただろうか。今になって昂ぶる感情が、想いが。遅れてアザミの身体中を駆け巡る。
「ダントツ1位は通形ミリオ君!
次いで2位は波動ねじれさん!そして…」
次々と発表されていくのはヒーロー科の名前。それもそのはず、体育祭はヒーロー科のための舞台といっても過言ではない。
(やっぱりミリオは堂々の1位…!
ねじれも2位だなんて凄いなあ。でも…)
“超”が付くほどのあがり症の、とある男子生徒をチラリと見る。同じビッグ3である、通形と波動の順位からかけ離れて名前を呼ばれていた。
(勿体ないな)
本当は凄い人なのに。
アザミは自分の名前が呼ばれないか今か今かと待ちつつも、頭の片隅ではそんなことを考えていた。
「サポート科、絢爛崎美々美さん!」
「わ!?絢爛崎さん、凄い…!!」
「オホホホ、そんなの当たり前でしてよ!!!」
ヒーロー科を抜いてサポート科が上位通過者に入るなんて!やっぱりあのバサバサ睫毛は伊達じゃないんだ!…って、痛い!睫毛がバシバシ当たって痛いってば!
アザミは彼女の放つ豪華絢爛なオーラ(睫毛?)に圧倒されていると、
「経営科
猫柳アザミ!」
「え……?」
時が止まるとは、こうゆうことを言うのだろうか。
「以上、予選通過者は上位42名!
残念ながら落ちてしまった人も安心して下さい!まだまだ皆さんの見せ場は用意されてます!」
呆気なく予選通過者の発表が終わり、13号先生は第二種目の説明に移行しようとしていた。
「え?私、今……ッ」
名前、呼ばれたよね
聞き間違えじゃないよね?