第6章 体育祭、それぞれの想い
アザミはPOM!と猫の姿に変身し、地雷原を颯爽と走る。
「目を凝らせば地雷がどこに埋まってるかもわかる…!」
この関門は私には相性抜群だ!
アザミは次々と地雷と生徒たちの間をスルスルと抜けていく。
(あとっ、少し…!あと少し、頑張れば…!)
個性を使用するのも体力的に限界が近い。息が乱れ浅い呼吸を肩で繰り返す。
(走るのを、辞めたい…ッ
でもっ、ここで辞めたら、もう…っ)
走れなくなるのは目に見えていた。
ここまでせっかく巻き上げている順位を落とすことは絶対にしたくない。アザミはギリィ…っと歯を食いしばる。
大抵の者はダメージと体力面を鑑みて速度を殺して地雷を避けていく。跳躍系の個性持ちも迂闊には飛べないし、先頭ほど避ける地雷は多い。妨害も盛んでスピード出せないだろう。
(…いや、これはイケるんじゃ、ない?
予選突破………できちゃうんじゃ、ない?!)
だから、油断してしまった。
「きゃあっ?!」
例えアザミが地雷を上手に割けられても、他の生徒が爆発を起こすことを。
アザミの軽い猫の体は空高く吹き飛ばされるも、猫の身体能力のおかげで地雷を踏まずに着地する。しかし、体力がもう追いつかない。
「くっ……」
フラフラになりながらなんとかその場に踏み留まる。多分、最後まで走り抜けない。アザミはぼんやりとそんな風に考えてしまった。
「ここまで、きたのに…っ」
やっぱ経営科がサポート科、ましてやヒーロー科に敵う訳がなかったんだ。
悔し涙が視界を遮りそうになったその時、
ドスンッ ドスンッ ドスンッ
「わっ!…わっ?、わっ!?」
地雷とは違う地面の揺れに周囲の生徒達も慌てふためく。しかもだんだんと揺れは大きくなり近づいてくるではないか。
涙が引っ込んだアザミは何事かと振り返ると、後ろには見上げる程の巨大な岩男…と見間違えてしまいそうになる、個性が岩化であろう男子生徒が地鳴りを起こしながら歩みを進めていた。
「す、すごい…」
しかもその男子生徒の恐ろしいこと、地雷の爆発が起きようとも吹き飛ばされず地に足をしっかりつけて歩み続けているのだ。
「!」
これはラストチャンスかもしれない。