第6章 体育祭、それぞれの想い
「よし!キャッチできた」
投げつけた自身の服を空中で捉える様は、通形が空へワープしたように見えた。
通形の丸裸の姿は恥ずかしさにより目を逸らしたくなるものの、彼が地面に消えてから空に現れる数秒の出来事は瞬き一つ許されない。誰もが目を離せなかった。
《い…っ、今何が起こった?!地雷が1つも作動せずクリアとか、そんなん有りかァー?!!》
「最後の体育祭ぐらい、格好いいとこ見せたいんだよね!」
ジャージのズボンをいそいそと履く通形はどうも格好がつかない。セリフと絵面が合わないのが少々残念だ。
「ビリっけつまで落ちた俺を、心から信じてくれたのは君だけだったんだ」
ジャージの上着にグッと袖を伸ばし、前のチャックは閉めずに走り出す。上着がはためく様はまるでヒーローのマントそのものだ。
《序盤の展開からトップをキープし続けブッチギリの1位!
さすが我が校のビッグ3!!
スタジアムへ還ってきたその男―――――…
通形ミリオだーーー!!!!》
ワァァアァァアアァーーーーーッ!!!
観客は立ち上がり通形に拍手喝采を浴びせる。その中にひとり佇むように通形は呟いた。
「俺は君にとって、
格好いいヒーローに近づけたかな
―――ねえ、アザミ」
「…はっ!?」
プレゼント・マイクのより一層大きな実況音声がアザミの薄れゆく意識を目覚めさせる。
「負ける…もんかあッ!!」
蹌踉めく足に渾身の力を込め、うおおお!!と倒れまいと踏み留まる。
「そっか、ミリオが1位なんだ…!」
やっぱりそうなった!ミリオすごいやっ!
とても嬉しく思うも1位の通形との差を突きつけられ、惨めな気持ちがほんの少しアザミの胸の内をじわりと滲ます。そんな気持ちを吹き飛ばすように次の関門である地雷原へ走り抜く。
そこには既に上位半数の生徒達が挑んでおり、皆慎重にゆっくりと歩を進めていた。時折地雷を踏みつけた生徒は派手な爆発を起こしている。
「地雷は踏みつけて信管が作動するタイプっぽいね…っと!」
威力は体が少し飛ぶくらいだが、体勢を崩すと連鎖的に爆発してかなりのタイムロスになる。
「やっぱここも個性使ってくべきかな」