第6章 体育祭、それぞれの想い

　アザミは一瞬、障害物競走の自分の順位を忘れてしまうほど嬉しかった



　去年は今のように目立つ存在ではなかった通形が、努力に努力を重ね今の地位まで登りつめた。それこそ血が滲むような努力だ。


　「…流石、私が見込んだヒーロー！」


　私の目に狂いはなかった！
アザミは心の中でガッツポーズをしながら綱を渡る。


　《先頭が一足抜けて下はダンゴ状態！
上位何名が通過するかは公表してねえから安心せずにつき進め！！

　そして早くも最終関門！！
かくしてその実態は――――――…


　一面地雷原！！！怒りのアフガンだ！！》



「先頭はもうそんなとこに！早く早…く？」


　アザミは無事に綱渡りを終え、再び走り出そうと足に力を入れるもフラッと蹌踉めいた。


　「あ、あれ？」


　緊張と疲労と、個性の使用で身体に負荷がかかり体力に限界が近づいていた。ミリオに感心してる場合じゃなかった…！と、薄れゆく意識でそんなことを考えた。


　《地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ！！目と脚酷使しろ！！

　ちなみに地雷！威力は大したことねえが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ！》


　先頭を走っていた通形は地雷原に足を止めた。


　「なるほど！先頭ほど不利だね！
エンターテイメントな障害物でとてもユーモラスだ！

だけど、僕には関係ないね」


　通形はバッと上着の服をたくし上げ、なんとその場で服を脱ぎだした。


　《はぁぁぁぁぁあん！？通形は何をやってんだァ？！！ちょ、放送修正かけろ修正ーーー！！》


　観客席からはどよめきと女性の叫び声が湧き上がる。


　「いや〜皆さんゴメンね！個性の性質上、こうするしかないんだよね…えいっやぁぁあ！！」


　通形は脱いだジャージや下着を地雷原が埋まっていない終了地点に向かって投げつけた。


　「だって、俺の個性は






　透過だから！」





　そう言うと通形はスッと地面へ消えていった。



　《おぉっと！？地面に沈んでったぞ！！どこ行ったアイツーーー？！！》

　司会のプレゼント・マイクと共に、観客は先程とは違うどよめきが沸き上がるその時、


　「PO……

WERRRRRRRRRーーーーーー！！！」



　地面に消えていった通形が瞬時に空高く、力強く姿を現した。