第6章 体育祭、それぞれの想い
友達や幼馴染達に、情けない姿を晒す方がずっと怖いや
時が過ぎすぎてしまった今、自分がヒーローになりたいかと問われると正直わからない。
けれどあの日、捨ててしまった大切なモノがいつまでも気掛かりだった。私の心はずっとあの日のまま。だから、この体育祭でけりをつける。
「取り戻すんだ」
私の大切な――――― !
《やっぱ3年ステージは気合が違ぇな!!
続々とヒーロー科が先頭を行くも、他の科も喰らいついていくーーー!!!》
アザミは1番になった。
しかし、それはヒーロー科抜きの他の科の中での話である。
「…んっとに、早いなあっ」
ヒーロー科のA組やB組はいとも簡単に仮想敵を越えていく。いくら自主練で鍛えてきたとはいえ、ヒーローになるために厳しい経験を糧とした彼等には敵う訳がなかった。
《第一種目は障害物競走!!
この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!》
プレゼント・マイクが改めて解説を始める。アザミはそれを聞き流しながら第2関門へ走り出す。
《ルールはコースアウトさえしなけりゃ何でもアリの残虐チキンレースだ!!
各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!》
「ヒーロー科にはチョロイんだろうなぁっ」
アザミは額に大粒の汗を浮かべながら全力疾走する。これ以上差を広げないために。彼等に置いてかれないように。
《オイオイ第一関門チョロイってよ!!
んじゃ第二はどうさ?!
落ちればアウト!!
それが嫌なら這いずりな!!
ザ・フォーーーーーール!!!》
第二関門へ着くと、深い谷が現れた。
谷にはいくつもの石柱が不規則に立ち並んでいる。底が知れない深さにより、石柱たちは浮かんでいるようにすら見える。そしてその石柱には綱が張られていた。これはまるで…
「大げさな綱渡りねっ」
アザミはどのように渡ろうかと思考を巡らせていると、横からキラキラと眩い光が差した。
「オホホホ!来たわねアピールチャンス!
有終な美を飾るのはこの私!
私の絢爛豪華なサポートアイテムが脚光を浴びる時!」
「け…、絢爛崎さん?!」
3年G組サポート科、絢爛崎美々美が現れた。