第6章 体育祭、それぞれの想い
ネットニュースを見た時、何も感じられなかった。考えられなかった。
今になってドロドロとした感情が湧き上がり、押し込めている蓋を無理やり開けようとしている。そんな気がした。
……いや、何を考えてるんだ私は。今は試験に集中しないといけないのにっ!
「とりゃっ!10ポイント!」
私は雄英高校のヒーロー科に合格するんだ!
――――合格して、どうするの?
「よし、25ポイント!」
嫌いだった個性でも誰かを守り、誰かの役に立つって証明するんだ!
――――何のために?
「41ポイント」
ヒーローの資格取って、大好きなヒーローのサイドキックになって…!!
――――そのヒーローは、もういないのに?
「…さい……うるさい、うるさいっ!!」
大好きなヒーローの手助けをしたかった。
そのためだけに、ずっとずっとヒーローになりたかった。
「ヒーローが、死んじゃうなんて……」
そんなこと、ある?
正義の味方が、やられちゃうなんて
そんなこと
そんなこと、あるんだ、なんて
アザミの動きが止まり、受験生達が次々と彼女を追い越し仮想敵をなぎ倒していく。
その際に聞こえた声達が、アザミを更に奈落の底へ突き落とす。
「絶対に!ヒーローになってやるんだ!!」
(私が、ヒーローになる意味なんてあるの…?)
「オールマイトをも超えてやる!」
(そんな、目標も、ない)
「ヒーローになって、夢を叶えるんだ!!」
(叶えたかった夢は、もう…)
もう、無い
なりたいヒーロー像も、目標も、夢も
――――何もない。
全部、全部失ってしまった。
ヒーローだって敵にやられてしまうんだ。命を落とすんだ。
私が大好きなヒーローはこの世からいなくなってしまった。
もうなんの意味も、ない。
胸が苦しくて、上手く息が吸えない。視界がぐにゃりと歪み、ちゃんと前が見えない。
悲しみに打ちひしがれたい。思いっきり泣いて、この想いを吐き出したい。誰かに受け止めて欲しい。そう思うと同時にこれは夢で、目が覚めたらいつもの日常生活が待っているのではないか。誰か叩き起こしてくれないだろうかと、現実逃避をしている自分がいた。