第6章 体育祭、それぞれの想い
「やっぱり、アザミちゃんは凄いや!」
「別に凄くねぇだろーが!まだ受かってもねえわ!」
「だ、だってオールマイトの母校だよっ?!
しかも僕らの中学校で、受験した人すらいなかったんだから…!」
「えへへ、ありがとデクくん!かっちゃんも応援してて…
「………ッ、調子に乗ってんのも、今のうちだかんなッ!!」
「「!」」
爆豪の張り詰めた声が、アザミと緑谷の楽しそうな会話を掻き消した。
「2年後は雄英受けて!
テメェより優秀な成績残して!!
ゼッテェに追い越してやる……ッ!!!」
爆豪の挑発はいつものことだ。
しかし、アザミと緑谷は彼のいつもとは違う雰囲気に息を飲む。
獲物を定めたような鋭い赤い瞳、強い意志を込めた言葉はまるで誓いのようだ。そんな爆豪の姿に惹き込まれる。
ああ、彼は本気だ。
雄英に合格して、きっと物凄いスピードで追い上げてくる。
不思議なことに、この時。
アザミは自分が雄英高校に合格するイメージより、爆豪が雄英高校のヒーロー科の制服を身に纏う姿の方が鮮明に浮かんだ。
「……うん、待ってるよ
そんでさ、一緒に学食たべよーよ!」
「ハッ、誰が食うかよ」
「アザミちゃんが受験したらどんな試験だったか教えてほしいんだけど…痛っ?!」
「あ"ぁ?!なんっっっでクソデクに教えなきゃなんねーんだよ!?」
「ヒッ」
「ちょっと!!そもそも教えるのは私なんですけどっ!?」
先程の雰囲気は一瞬にして一転し、わいわいぎゃーぎゃーと3人で騒ぐ。
爆豪と緑谷は仲良くないが、アザミはこのやり取りは嫌いではなかった。
爆豪は緑谷に手を出すもののしっかり加減しているし、緑谷はへっぴり腰ではあるものの爆豪にきちんと意見している。
(あぁ、いつまでもこんな時間が続けばいいのに)
大好きだ
幼馴染達も、ヒーローも
大嫌いだった私の個性も、今の私も
みんな大好きだ
「デクくん、かっちゃん
ありがとう!」
アザミが突然二人にお礼を言い出したため爆豪は訝しげに眉をひそめ、緑谷はキョトンとした顔をした。