第4章 体育祭、それぞれの準備
「かっちゃん?」
アザミの声でハッと我に返る。
「――――ッ、
…お前、頑張ってるっつったよなァ?!」
「へ?!…う、うん!」
「じゃあ気張れや」
「わっ!ちょっと!」
しみったれた、この変な雰囲気を吹き飛ばすため、俺はアザミの頭を鷲掴みぐちゃぐちゃにしてやった。アザミが再び怒るかと思いきや「頭ぐちゃぐちゃじゃなくて!女の子は頭ポンポンがいいんだよっ!!」と訳の分からねぇ事をほざいてやがる。
………女は頭ポンポンがいいだの、んなこと知るかッ!!
テメェがモブだったらなあッ!!
ライバル心と共に芽生えたこの面倒くせぇ想いも、拗れに拗れた好きという気持ちも!!持ち合わせずに済んだんだわッッ
そう考えると余計に苛ついたため、手を離す瞬間、力いっぱい頭をぐちゃぐちゃにしてやった。
手櫛で髪を整えるアザミは「本当にやめてよね!」と言いつつも満更でもない…バァカ。
「わっとと!………かっちゃん、さ」
「あ?」
まだ何かあんのか?
どんな言葉が発せられるのか、俺は少し警戒してアザミの発言に身構える。
「かっちゃんさ、この間、“なんでヒーロー科辞めたんだ”って私に言ったじゃん?」
「どーだかな」
これ以上アザミを追い詰めるようなことはしたくねえ。だから俺は適当にはぐらかした。
「そう、言われてさ。
あぁ、私にも少しはヒーローになれる素質があったかなあって。…ヒーローになりたかった気持ち、思い出しちゃって。
体育祭、改めて頑張ろうって思えたんだよ」
だから、ありがとね!なんて笑うアザミ。
…ほらな。お前はそうやって勝手に這い上がって、俺が知らねぇ内に超えていくんだ。
「そーかよ。精々頑張れや」
口角が上がりそうになるのを隠すため、アザミより先に歩みを進める。
目と鼻の先にアザミの家が見えてきた。
…別れるのは心惜しいが、これで本当にタイムリミットだ。
「うん!……もし、これがお芝居だったら、かっちゃんが主人公で。私はせめて村人A、いや、村人Dくらいのモブになりたいなぁ……イタッ」
「だからモブじゃねーつったろーが!
何度も言わせんじゃねえ!」
俺の話聞いてたんか?!あぁ"?!
容赦なくアザミの頭にチョップをお見舞いしてやった。