第4章 体育祭、それぞれの準備
「だって!心操くんの個性って戦闘に救助活動にも活かせそうだし!他の人となかなか被らない個性でさ!……」
何を言い出すかと思えば、また聞いてもねえことをベラベラと…!!
こんっのクソナードアザミめ…!!!
「…だから、さ。かっちゃん」
「ああ"?!ンだよ!?」
まだあんのかよ?!
グワッと再び俺は目を吊り上げる、
「……だから、ね。
かっちゃんにとって心操くんが“モブ”なら、
私はもっと“モブ”になっちゃうんだよ」
そこには眉尻を下げて困ったように笑うアザミ。
「―――それ、本気で言ってんのか?」
「…冗談でこんなこと言わないよ。
いつもさ!かっちゃんにでかい顔してるけど
……本当は不甲斐ないんだ、私」
それが痛々しくて
寒くもねえのに、俺より細い肩が震えてて。
泣いちゃいねーが、それがまるで泣いてる様で。
いつものアザミからは想像できない心の内を知ることができて嬉しい反面、同時に強くなりたいと思った。
「アザミ…お前は」
もし俺が同い年、または年上だったら。
「守ってやる」とか「心配すんな」とか言えただろうか。不甲斐ないのは俺の方だ。
だけど、アザミ。テメェは…
「お前の顔は、いつだってデケーだろうが
あの幼児向けキャラの餡パン?みてえじゃねーか」
「な"……は、はぁっ?!!」
「何を今更言っとんだ、ボケてんのか?あ?」
―――お前は、弱くなんかねーだろ
誰かに守られるだけの。助けを求めるだけの。
そんな存在じゃねえ
「ちょっと!?これでも毎日小顔体操とかやって、」
「お前が」
怒るアザミを遮り、言葉を重ねる。
いつもの調子のアザミに戻り、心の中でホッとひと息ついた。
…ちなみに。煽るためにああは言ったが、そんな風に思ったことは一度も無え。
「……お前が
アザミが俺にとってモブだったら
どんだけ良かったことか」
「……え?」
俺を見上げる、キョトンとしたアザミの顔。
月明かりに照らされたコイツの肌はより一層白く際立つ。けれど頬は風呂上がりのようなほんのりと赤味が差し、目は潤んでいて。
「―――ッ」
薄く開かれた無防備な口元に、目が釘付けになってしまった。