第4章 体育祭、それぞれの準備
「つーか、1-Aに来るなっつったよなァ?オイ」
「えっと、それは!話せば長くなりまして…!」
聞いたのは俺だが。
テメェの、アザミの話をいちいち全部聞くつもりはねェ。
あれだろ、どーせA組に来る前に懐かれたんだろ。だから来るなっつったんだよアホ。これじゃあ意味ねェだろーが。
「なにクソ髪から金借りてンだ!クソナードも余計な事しやがって!!」
「デ、デクくんからは何も借りてないよ!」
教科書、借りられなかったの間違いだが。と、言うアザミを思わずギッと睨みつける。
クソ共の顔を思い出してしまい、尚更目が釣り上がっていくのが自分でもわかる。
「…俺だけに頼ってりゃいーだろ」
許せねぇ。
雄英に入学し、空いてしまった距離をやっと縮められると思った矢先。他の誰かで埋められ、そしてコイツを…アザミを掻っ攫われるなんて。
誰にも獲られないように、アザミの手を掴む。
「え!だって…!」
狼狽えるアザミ。
……知るかよ、テメェの都合なんて。
「何で、あん時―――」
そーだよ、知る由もねえ。
勝手に近づいてきたと思ったら、ふらっと姿を消してしまう。まるで野良猫のように。
だからまた逃げられねェように、アザミの手をギュッと握り自分の方へ引き寄せた。
「…俺が“モブ、ザコ”つったとき。
何でテメェが…アザミが凹んでんだよ」
「―――っ」
ほら、今もだ
何で傷ついた顔なんかしやがんだ
何でテメェが傷ついてんだよ、アザミ
ふざけんな
ふざけんじゃねえ
「だって、私は……」
「誰だよ、アイツ」
「アイツ?」
突然振られた話題に疑問符を浮かべるアザミ。
………分かれよ
「隈野郎だよ」
「熊野郎…?」
「熊じゃねえわ、隈だっつってんだろーが!!」
いちいちボケんじゃねえ!!
「クソ紫髪の」と付け加えると「あぁ!心操くんね!」と手をぽんっと叩く。
どーしたらそんな風に知り合いになるんだよ、オイ。
「図書委員で、ちょっとね」
「……チッ。そーかよ」
図書委員に入るべきだった!なんて。
口が裂けても言えねぇし、時すでに遅し。
「心操くんって、凄いんだよ!」
「……あ"?」
火に油を注ぐことをコイツは口走りやがった。