第8章 躾
尸魂界に戻り、一連の出来事を総隊長に報告すると私室に戻った。
任務の終わった開放感から、強い眠気と身体の怠さに襲われる。
軽く湯浴みをして布団に潜ると、あっという間に意識を手放した。
あ。阿近に義骸返しに行ってない……。
明日返しに行こう。
「んんん……」
そう思っていたのに、地獄蝶の通信で起こされた。
嫌なタイミングは重なるもので、今から緊急の隊首会を執り行うそうだ。
のっそりと緩慢な動きで死覇装に着替え、一番隊の隊舎へと向かう。
「遅い」
「申し訳ありません」
「まぁ良い。今回は千早に依頼した調査結果について説明する。
各自末端の隊員にまで落とし込みを行い、再発防止に努めるように!」
総隊長の話の最中、ずっと倒れないように脚に力を込めていた。
気を抜くと意識を持っていかれそうだ。
幸いにも私の立ち位置は総隊長から一番遠い場所の為、気付かれてはいないだろう。
私の前に立っている浮竹さんが大丈夫か、と視線を送ってくれたけど返す気力がなくて曖昧に笑って終わった。
「以上じゃ。解散!」
その言葉と共に総隊長は部屋から出て行く。
他の隊長達も各々職務に戻る。
「おい、大丈夫か?千早。フラフラだぞ」
「ごめんなさい、浮竹さん。任務中ずっと寝てなかったの」
「任務中って……1週間以上ずっとか!?」
「帰る前に1時間だけ仮眠は取ったんだけど……」
「たった1時間で1週間の疲れが取れるか!
今日はもう仕事しないで早く寝なさい。
歩けるか?隊舎まで運ぼうか?」
フラフラとおぼつかない足取りで歩いていると、すかさず浮竹さんが腰を支えてくれた。
珍しく感情を顕にして怒る浮竹さんの姿に、まだ部屋に残っていた隊長数名が何事かとこちらの様子を見やる。
「ん。ごめんなさい……」
「悪かった、俺も強く言い過ぎた。
だがあまり無茶な生活はするな、心配になる」
「浮竹、千早ちゃんも反省してるんだから、その辺で。ね?千早ちゃん?」
「ごめんなさい……気をつけます」
いつもとは反対で、浮竹さんが叱り、それを京楽さんが窘めてくれる。
今も昔も、二人には迷惑を掛けてばかりだ。