第14章 また寝てねぇだろ。
阿近の部屋のお風呂。
そう考えるだけで身体が少し火照ってしまう私は重症だろう。
のぼせないように早めに上がり、少し身体の火照りを冷ましてから戻る。
「お風呂ありがとう。ってそれ仕事?」
「あー……まぁ、一応な」
「そっか、頑張ってね」
机の上の数枚の書類と向き合う阿近は、勤務中のような真剣な顔をしていてとても邪魔出来る雰囲気じゃない。
忙しいのに時間を作ってくれた嬉しさと申し訳なさが同時に襲って来る。
せめて邪魔だけはしないようにと、部屋の隅っこで近くに置いてあった本を読む。
「千早」
「うん?お仕事終わり?」
「あぁ。一区切りつけた」
「そっか、お疲れ様」
読みかけの本を一旦閉じて、阿近の隣に座る。
「相変わらず遠慮する癖抜けてねぇな」
「……そう?」
「さっきも俺の仕事邪魔しねぇように大人しくしてたんだろ?」
「え、うん。だって仕事だし……邪魔しちゃったら悪いから」
「家で出来るような仕事がそんな重要書類な訳ねぇだろ。
すぐは無理だろうけど俺の前でぐらい遠慮すんな」
コメカミを拳でグリグリされる。
地味に痛い。
「千早、こっち」
「え!重いからダメ!」
「そんな細ぇ身体して重い訳ねぇだろ」
「ひゃっ」
グイッと身体を引っ張られて、胡座で座る阿近の脚の上に乗せられる。
絶対重い筈なのに!
後ろから阿近の腕が回り、お腹に回される。
恥ずかしいのに嬉しくて、絶対今顔真っ赤だ。
そう自覚して俯きながら本の続きを読み始める。
「火曜と金曜だと、どっちの方が比較的暇だ?」
「うーん……どっちもそんなに変わらないけど、強いて言うなら金曜日かな。
どうして?」
「毎週金曜日、俺ん家来いよ。週に1回ぐらいは会いてぇ」
「うん!」
首筋に顔を埋めて話す阿近。
吐息が掛かって絶妙に擽ったい!
阿近が会いたいって言ってくれたのが嬉しくて、素直に首を縦に振った。
「俺が千早のところに行っても良いが……千早の方が気配に敏感だから、誰にも見つからずに来れるだろ。
都合つかない時は連絡するから、早めに仕事終わらせとけ」
「頑張るね!」