第14章 また寝てねぇだろ。
「っ、悪い、もうあんま持たねぇ……」
「んっ、あっ、手繋ぎたい」
手を伸ばすと阿近はそれに気付いて指を絡ませて繋いでくれる。
ギュッと固く繋がれる手はほんのりと汗ばんでいて。
「はっ、あっ……もう出すぞ」
「んっ、うんっ、だして」
「くっ……!」
最奥に自身を押し込むと、奥でドクドクと熱が弾ける感覚がする。
お腹の奥が温かさで満たされて、ビクビクと身体を震わせる阿近が可愛い。
ドサリと私の上に身体を預ける阿近の髪を撫でる。
また全て阿近に任せてしまった、と小さな罪悪感が沸く。
ズルリとナカから温もりが消えて少し寂しくなる。
「急にどうした?潮らしくなってらしくねぇ」
「うん、あのね、阿近に言わなきゃいけないことがあって……でも今はもうちょっとだけこうしてたい……って我儘言ったらダメかな?」
今回の件のことは阿近にも関係がある。
出来るだけ早く話さないといけない。
でも今はもう少しだけこの甘いゆったりした空気の中に居たい。
小さな声で本音を零すと阿近が喉を鳴らして笑った。
「好きなだけこうしてたら良いだろ。飲みもん取って来る」
クシャクシャと私の髪を雑に撫でると、着流しを緩く羽織ったままの阿近が台所へと消えて行く。
遠目からでも分かる、クッキリと首筋についた赤い噛み痕。
それを見てなんだか凄く満たされてしまうのは私が悪い子だからだろうか。
あれだけ濃く痕が残っているということはそれなりに痛かったに決まっている。
「おら、ホットミルク」
「ありがとう」
「火傷すんなよ」
「そんなに子供じゃないってば……あつッ」
ほらみろ、と阿近が大きな溜め息を吐く。
「火傷すんなって言ったろ」
「ごめんなさい」
「別に怒ってねぇよ。すぐ謝んのやめろって言ったよな?」
「ごっ、ごめんなさ」
「あ?」
「なんでもないです……」
まぁすぐ直るとも思ってねぇけど、と煙草を咥えた阿近が笑う。
見慣れない道具で火をつけていた。
「何それ」
「ん?これか?
帰る時にあの人に貰ったんだよ、ライターっつう火をつける道具」
「喜助くんから?」
「あぁ」
小型で持ち運びに便利そうな道具だ。
普段煙草を吸う阿近には最適な物だろう。
私も簪のお礼に阿近に何か返したかったのに、先を越されてしまった……。