第14章 また寝てねぇだろ。
「そっか……」
「勘違いしないで欲しいのは、これは千早ちゃんが悪いって訳じゃないこと!
そこだけは間違えちゃダメだよ、何も悪くないんだから。
千早ちゃんが気に病む必要はないの!」
「うん。ありがとう」
慌ててフォローをしてくれる京楽さん。
皆からのイメージでは京楽さんはいつもヘラヘラしている印象だろうけど、その笑顔の裏では実は1歩引いて冷静に周りを見ていて人の表情の陰りだとか、表情や仕草の細かな変化によく気がつく。
今の護廷十三隊に居る誰よりも周りの変化に気がつく人だ。
「……千早ちゃん。山じぃは隊長格の恋愛は禁止だって言ってたけど、僕は別にそこまでする必要はないと思うんだ。
千早ちゃん達は公私をきちんと分けているし、仕事にも何も影響を出していない」
「でも……隊長である私が決まりを破る訳には、いかないでしょう……?」
そう。隊長は数多居る隊員のお手本となるべき存在。
その隊長が規則を破るなど、あってはならないだろう。
それでは他の部下に示しがつかない。
決して阿近と別れたいとか、そういう訳ではないけど……。
自分の気持ちと、隊長の責務との狭間で葛藤する。
「千早ちゃんはどうしたいの?」
「私は……」
「隊長だからとか、決まりだからとかそんなの一旦無視して。
1人の女の子として、千早ちゃんはどうしたいの?」
「……私は阿近と別れたくない。ずっと一緒に居たい」
「それなら僕は自分の気持ちを優先させるべきだと思うよ。
いつぞやの2人の件じゃないけど、自分の気持ちを見て見ぬふりして過ごすのもきっと凄く辛い」
阿近と別れないといけないかもしれない。
総隊長の話を聞いて、そう考えただけで胸がギュウッと握り潰されるかのように強く痛んだ。
いつかはこんな日が来るのではないかと不安になっていたこと。
「とにかく!僕は2人のこと応援してるからね。
千早ちゃんには幸せになって欲しいもん」
「ありがとう、京楽さん」
京楽さんの笑顔に少し心が軽くなる。
バレなければ問題ない。
気を付けて生活していればまずバレることはないだろう。