第9章 本格始動
「千早と居て勃たねぇ方がおかしいだろ。
裸で密着してんなら尚更な」
「そういうもの……?」
「そういうもんだ。
男って言うのは千早が思ってるより欲望に忠実なんだよ。
頭では分かっていても身体が勝手に反応しちまうことだってある。
だから覚えとけ。もし無理矢理されそうになったら遠慮せず抵抗しろ」
阿近が真面目に話してくれているけど、その手は私の胸の中心をクリクリと指先で引っ掻いていて、とても話どころではない。
全然耳に入って来ない。
「……このまま風呂の中でスんのと、布団でスんのどっちが良い?
今日は選ばせてやるよ」
「っ、布団が良い」
「そう言うと思った。俺は先に上がるけど千早はちゃんと温まったら出ろよ」
「うん、分かった」
先に浴室から出る阿近の背中を見て、ふと思った。
これはお風呂から出たらエッチするってことだよね?
私が出たら布団でシちゃうんだよね?
どうしよう……改めて時間を設けられると凄く意識しちゃう。
水面に口を付けてブクブクと息を吐き出し、ゴチャゴチャした頭の中を整理する。
*****
やっとの思いで頭を落ち着かせてお風呂から上がる頃には、少し時間が経ってしまっていた。
どうしよう、阿近を待たせちゃったかな?
こんなに時間が経っちゃってるなんて思わなかった!
「随分長風呂だったな。いつもそうなのか?」
「ご、ごめんね。ちょっと考えごとしてて……」
「いや、別に怒ってる訳じゃねぇ。その様子じゃ俺のこと意識してたんだろ」
ニヤリと笑われて顔がどんどん赤くなっていくのを感じる。
阿近にはやっぱりなんでもお見通しなんだ。
っていうかもしかして、それを分かっててやってたりするのかな?
「ふっ、顔真っ赤だな。来いよ、もう待ってやらねぇから」
布団に座っていた阿近が腕を広げる。
その腕に飛び込むように抱き着き、スンと首筋の匂いをこっそり嗅いだ。
阿近の匂いだ……。
「んっ、ん、ふ……ん」
押し倒され、唇が重なる。
最初は啄むように重なっては離れ、離れては重なり、を繰り返していたが次第にそれも変わって来る。
唇をくっ付けたまま離すことなく口内に舌が侵入してくる。