第9章 本格始動
「好きにして良いっつわれたから、本勝手に読んでるが良かったか?」
「うん、良いよ。
私読み終わってるし、阿近の気の引くようなものあったかな?」
「割とな」
「なら良かった」
「この本かなり前に絶版になったやつだよな?どこ探しても見つけらんなかったんだよ」
阿近が手にしていたのは黒い表紙の、少し古びた分厚い文献。
本と呼ぶよりは研究記録と言った方が的を得ているだろう。
内容がかなり危険で私が護廷十三隊に入隊して間もない頃に絶版になった物だ。
今から考えるとどのぐらい前だろうか。
「あと、この本も。
千早の部屋の本棚は娯楽の本より、文献が多いな」
「うん。昔から気になる物は調べたくなる質で」
「しかもどれもかなりマニアックなやつばかりだな。
ほとんどが表現が過激だったりで絶版になった物ばかりだ」
床に座り、本の続きを読み始めた阿近。
服装が死覇装から着流しに変わっているところを見ると一度自室に帰ったのだろう。
そこからまた来てくれたことに頬が緩む。
「ご飯作るけど何か食べたい物ある?今日なら比較的なんでも作れるよ」
手を洗いながら後ろに居る阿近に声を掛けると、阿近が立ち上がる気配があった。
喉でも乾いたのかな。
そう考えているとキュッと水を止められ、背中から抱き締められた。
ほんのりとする煙草の匂いに心拍数が早くなる。
「千早」
「な、なに?」
「千早が喰いたい」
「へ?」
「抱きたい」
背中に密着する体温や、耳元で囁かれる低い声に、鼓動がどんどん早くなっていく。
顔に熱が集まり、まともに頭が回らない。
「き、昨日シたよ……?」
「足りねぇ」
「えっと……」
「嫌か?」
「っ……」
阿近の声が鼓膜を揺らし、思考を鈍らせていく。
このまま流されてしまいたい。
でも昨日の今日で身体が少し疲れているのも事実。
こういう時に年齢の差を痛感させられる。
覆ることのない現実に胸が痛む。
「嫌なら無理にはヤらねぇ。俺に遠慮しなくて良い」
「ゆ、ゆっくり、してくれるなら、大丈夫……です」
「俺に気を使ってんならあとで怒るからな」
濡れた手をタオルで拭いてくれて、布団に運ばれる。