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【場地圭介】ペットショップの店員にパンツ見られました

第10章 私と圭介と確執と


 小さい頃は、誰も踏んでいない雪を踏みしめた感触が好きだったなぁ……。もうそんな童心は持ち合わせていないけれど。

「今なんて、雪降ったらむしろテンション駄々下がっちゃうもんなあ」

 コンビニの来客音と、エアコンの生暖かい風が私を出迎えてくれる。大した用事もないし、ささっと買って帰ろう。そう思って食べたいものを次々カゴヘ入れて回る。あ、コンビニ限定のアイスおいしそう。
 暖かい部屋でぬくぬくとアイスを食べる私を想像して、無意識にごくりと喉がなった。自分へのご褒美だ、ご褒美。あとこのチューハイもご褒美だ。毎日飲んでいるから、毎日がご褒美説もあるけど。そんなことはこの際、置いておこう。

「さっっっむ」

 やる気のない店員さんの声をバックラウンドミュージックに、コンビニを後にする。暖かかった店内とは違い、一気に現実へと引き戻してくる寒さにぶるりと身震いした。
 早く帰ってエアコンつけっぱにしてきた部屋に戻りたいー! はあ、とはいた息は真っ白で……どれほど外が寒いのかをありありと伝えてくる。
 よし、行こう。そう思って銀世界へ一歩踏み出したところ「ちゃん?」と声をかけられて、動きが止まる。ちょいちょいちょい、こんな少女漫画のような出会いは求めていないんですよ。休みの日に出歩いて、はいこんにちはーとか求めていないんですよ。
 とは思ったものの無視をするわけにはいかず、声のした方へと振り向けばマフラーに鼻まで埋めた圭介が、寒そうに突っ立っていた。
 喉に貼り付いて出てこない声をなんとか絞り出したのは「久しぶりだね、圭介」と定型文のような挨拶だった。

「おー」
「コンビニに用事?」
「まぁな」
「そっか! 私はもう帰るところだから、またね」

 じゃ! と片手を上げて圭介の横を通りすぎようとしたが、それは叶わなかった。ひんやりとした手に手首を掴まれ、どうしたものかと頭を働かせる。
 時間にしたら数秒なんだろうけれど、体感としては何十分も経ったかのように時間の進みが遅く感じられた。
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