第7章 時を駆ける想い
「お兄ちゃん…」
そう呼んだ瞬間、わたしの目から涙がボロボロと溢れ、その様子を見て兄が慌てて近寄ってきた。
「え…!そ、そんなに休みが潰れるの嫌か??」
「お兄ちゃん!!!」
わたしはその場から飛び出してお兄ちゃんに勢いよく抱きついた。
驚いたお兄ちゃんだけど、大きな身体でちゃんと受け止めてくれる。
「??ミコト?」
「お兄ちゃん…夢じゃないの?
会いたかったよ…」
「はあ?昨日も会っただろ??」
「会ってないよ…
会ってない…7年も…」
「…お前、頭大丈夫か?」
意味不明な言葉を並べて泣き出すわたしを、兄は不思議そうな顔して見た。
これは夢なの…?
もしそうだとしたら、随分リアルな夢だ。
匂いだって、お兄ちゃんの匂い。
抱きついたお兄ちゃんの身体からは、ドクドクと心臓が鼓動する音が聞こえる。
お兄ちゃんが、生きてる…
「ミコト、そろそろ荷物を運び出さないと…」
そうか。
お兄ちゃんの引っ越しを手伝った日の夢か…確か陣平くんと2年ぶりに会った日だ。
つい昨日のように思い出せる7年前の出来事を思い返しながら、わたしはゆっくりお兄ちゃんから身体を離した。
そして、このまま出来るだけ長くこの夢を見ていたいと思いながら、着替えてお兄ちゃんの部屋から荷物の搬入を開始した。