第7章 時を駆ける想い
段ボールを車に詰め、お兄ちゃんと一緒に車で新居に移動する。
車のカーステレオからは、7年前に流行った曲が流れていて、リアルすぎる夢にわたしは驚きながら窓の景色を見ていた。
「それにしてもミコト、しばらく見ないうちに美人になったなぁー。
流石、俺の妹だ。
大学でモテモテだろ?」
「女医はモテないんだよ。
恋人もいないし」
「お前はまだ医者じゃないだろ?」
つい、26歳の記憶のまま受け答えしたわたしを、お兄ちゃんが不思議そうに首をかしげた。
そうか、わたしはまだ医学部の学生だ。
「大変か?授業は」
「えっと…2年生になって、ようやく医学の授業が始まったとこ。
まだまだこれからだよ」
「楽しみだなあ。
ミコトが医者で俺が爆処の警察官。
俺が救えなかった人を、ミコトが救うかもしれないもんな」
このセリフ、覚えてる。
わたしはこの時思ったの。
縁起でもないこと言わないでって。
それが無惨にも現実に起こることになると知っている今のわたしは、思わず声を荒げて怒鳴った。
「やめて!!!」
「?…ミコト?」
「助けられなかったとか、そんな…縁起でもないこと言わないで…」
「冗談だよ」
「冗談でもだめ!!」
ものすごい剣幕のわたしをお兄ちゃんがますます不思議そうに見ながら、車は予定通りお兄ちゃんの新しいマンションへと到着した。