第7章 時を駆ける想い
「…松田には何を?」
「…今、幸せ?って聞きました。
返事はなかったけど」
「…君は?」
「え?」
「君は今、幸せですか?」
唐突に聞かれたけど、はい!そうです。とはとても答えられなかった。
陣平くんが亡くなってから、誰かを愛するということが怖い。
愛して失うぐらいなら、最初から1人の方が楽だ。
そう思うと、恋をする気には到底なれなかった。
結婚を前提に付き合って欲しいと、誰もが羨む男性に言われても、陣平くんに抱かれた時の幸福感には到底叶わない。
陣平くんがいない毎日に幸せなんてありえない。
そう思ってるのが顔に出ていたのか、降谷さんは優しく笑って言った。
「君の幸せを、きっと一番に願っていると思いますよ。
松田も萩原も。
…では、僕はこれで」
そう言うと降谷さんは会釈をして墓を後にした。
わたしの幸せか…
そんなの、どうしたら手に入れることができるんだろうね。
陣平くんを忘れて、他の誰かと結婚すれば、幸せになれるのかな?
ため息をついて、ゆっくりとその場から立ち上がった。
「…じゃあ、また来るね」
そう言って、わたしも墓の前から帰路についた。