第7章 時を駆ける想い
寺の住職さんに挨拶を終え、タクシーを拾うために大通りに向かおうとした時、ふと寺の横の敷地に大きな階段ができていることに気づいた。
「…こんな階段あったっけ?
鳥居があるってことは神社かな?」
毎年墓参りにきているけれど、初めて見た。
神社って新しくできたりする?
そんな風に不思議に思いながらも、わたしは吸い寄せられるようにその階段を登った。
「わたしが見落としてただけかなあ…
鳥居もすこし古ぼけてるし…」
そう思いながら階段を登っていくと、鳥居がだんだん近づいて来た。
今思えばただの好奇心だったのだけど、まさかこれがわたしの運命を大きく変えることになるなんて、想像もできなかった。
1日歩き回ったヒールの足でようやく頂上まで階段を登り切ろうとしたとき、突然大きな突風が吹いた。
ブワッ
耳に風の音が妙に大きく響く。
そして、わたしの身体は風に煽られてバランスを崩し、履いていたヒールで足を捻る。
その反動で、身体は上がってきた階段から落ちるように傾いた。
ヤバい。
このまま落ちたら死……
そう思いながら、わたしの身体は長い石の階段をゆっくりと落ちていく。
まぁ、これも運命か…
お兄ちゃんや陣平くんの死と比べると、ずいぶん間抜けだ。
一人で足をひねって階段から落ちる事故死なんて。
でも、きっとあの世で再会した時に2人で笑ってくれるよね…
そう思うと、フ…と笑みが溢れてそのまま目を閉じた。