第53章 最終話 evermore
あの爆弾事件の後、しばらく捜査一課に所属していた陣平くんは、元々の爆弾処理技能を評価されて爆発物処理班に再オファーされた。
お兄ちゃんの仇を取った今、一課にとどまる理由もなく、今は機動隊爆発物処理班の隊長を務めている。
お互い忙しさを極めている2人だけど、子育ても家のことも協力して、幸せな毎日を過ごしている。
萩原家之墓
そう書かれた墓標の前に3人揃って並んで花を添えた。
水を掛ける陣平くんに、美桜は「みおもやるー!」と両手を伸ばして柄杓を取ろうと飛び跳ねてる。
きっとお兄ちゃんが見てたら、俺のプリンセスーーなんて言ってさぞ可愛がっていたんだろう。
「ほら、パパと一緒にかけようぜ」
「うんー!ぱぱはやくー!」
いや、もしくは陣平くんのこの子煩悩っぷりに驚いていたかもしれない。
陣平ちゃんがパパとはびっくりだな。
なんて言いながら、きっと美桜のことを自分の子供のように可愛がったんだろうな。
そんな風にお兄ちゃんに思いを馳せていると、陣平くんが真剣な顔をして手を合わせ、目を閉じた。
美桜はパパの方を見て、同じように真似をしてお祈りしている。
その光景がまた愛しく感じて、わたしも同じように手を合わせて目を閉じた。
お兄ちゃんは姿形は見えないけれど、声を聞くこともできないけれど、わたしたちの心の中で永遠に生きてる。
いつでも、いつまでもずっと見守ってくれてる。
そしてまたきっと、わたしたちがピンチになったら助けに来てくれるはずだ。
目を開けて空を見上げると、青空が広がっていた。
秋のほんの少し冷たい空気が頬を冷やして、同時に流れた涙を乾かした。
このずっと続く空は、お兄ちゃんみたいだ。
ふと隣を見ると、美桜がお祈りを終えて陣平くんに抱っこをせがんでいる。
ひょいと抱き上げた陣平くんは、美桜に尋ねた。
「美桜は萩と何話したんだ?」
「んとね、ママのお兄ちゃんにね、美桜とけんちゃんがずっと仲良しでいさせてねっておねがいしたの」
「けんちゃん!?!」