第52章 愛
松田side
仕事を全て終わらせた俺は、急いで米花中央病院に戻った。
10時間にも渡るミコトの手術は無事に終わり、今はICUにいると千速から聞いた。
受付を済ませ、ICUに向かうと入り口のところでミコトの母が俺を待っている。
「松田くん」
「っ…ミコトは?」
「こっちよ」
連れられて中に入ると、俺は目を見開いた。
ミコトの身体は色んな場所から管が通され、繋がれた機械はピッ…ピ…と無機質な音を鳴り響かせている。
「先生の話では、救命できたことが奇跡なんですって…。
目を覚ますかどうかは、保証できないって」
「っ…」
「これ…あの子が身につけていた荷物」
そう言って差し出された透明な袋に入っていたのは、ミコトが持っていたとされるもの。
携帯、俺が初めての誕生日にプレゼントした時計、そして薬指につけていた婚約指輪。
どれも血が付いていて、俺はまた視界が涙で歪んだ。
こんなに血が出るほど大怪我をして…こんなに華奢な体で胸を切り開かれて…今管だらけかよ…
そして、その荷物の中に1枚紙があるのに気付いた。
その紙もところどころ血で染まっていたが、どうやら病院内の多目的トイレや消火栓のリストだ。
中には、今回一つ目の爆弾が仕掛けられていた場所もある。
そしてそのリストのほとんどに線が引かれている。
まるで、初めから爆弾が仕掛けられることがわかっていたみたいだ。
思えば俺は、あの観覧車で死ぬはずだったのかもしれない。
ミコトが居たから、死んでたまるかと諦めずに心を保てた。
そしてたまたま、ヒントが出た場所がミコトがいる病院だったから残りのヒントを見ずにすぐに爆弾を止めたけど…
俺が地上に降りた時、米花中央病院の爆弾は通報があり、すでに処理班が向かっていた。
警察内の伝達がもう少し早ければ、俺はきっとヒントを一つも見る必要なく爆弾を解除出来ていただろう。