第52章 愛
悲しそうに、けれどどこか清々しい笑顔を見せ、わたしの大好きなお兄ちゃんの声で言う。
「俺は、2人の心の中にいる。ずっと、永遠に。
それで、2人のことずっと見てるよ。」
「っ…わたし…陣平くんと一緒に生きていいの?」
「当然だろ?」
「お兄ちゃん…」
また一歩ずつお兄ちゃんに近づくと、お兄ちゃんは呆れたように笑う。
「だから、こっちに来ちゃいけないって」
「一度だけ。一度だけぎゅってして。」
泣きながらそう願うと、お兄ちゃんは両手を広げて「おいで」と言い、わたしはその胸に飛び込んだ。
お兄ちゃん、死んでるなんて嘘でしょ…?
だって、腕の中こんなにあたたかいじゃない。
まるで現実感がなくて、ああこれは夢なのかもしれない。そう思っていると、お兄ちゃんがわたしの髪を撫でながら耳元で囁いた。
「ミコト。お前は俺の大切な妹だよ。
これまでも、これからもずっと。」
その言葉をくれた瞬間、お兄ちゃんの匂いも温かさも全て消え、光だけが残った。
「陣平ちゃんを、頼んだぜ。」
お兄ちゃんのその言葉のすぐ後、光の向こうから、誰かが何度もわたしを呼ぶ声が聞こえてくる。
わたしの大好きで、恋焦がれている声が
聞こえる。