第52章 愛
きっとこの結末は最初から決まっていた。
あの日、陣平くんのお墓参りをした帰りにタイムスリップしたときから。
陣平くんがいなくなるぐらいなら、他の誰かが身代わりになればいい。
そんなことを思った伏線回収がここにきてされたと言うわけだ。
いなくなるのは、わたし
ここから死ぬのか、はたまた元の世界線に戻されるのかわからない。
一つ言えるのは、陣平くんの隣に居られないということ。
だけどね、わたしはそれでも良かった。
だってわたしは、陣平くんがいない世界を3年も生きたんだよ。
あなたの心臓が止まって、目が見えなくなって、耳が聞こえなくなって、身体が消えてしまったこの世界で、わたしの心臓は3年も動いた。
あなたのいない世界で色んなものを見た。
色んな音を聞いて、お腹が空いたら食べて、楽しければ笑った。
そして、タイムスリップをしてから4年
陣平くんと過ごした日々は、全部一瞬一瞬鮮明に思い出せる。
奇跡のような時間をたしかにあなたと過ごした。
陣平くんは、ちゃんとわたしの隣にいた。
耳をすませば声が聞けた。手を伸ばせば触れられた。
思いを伝えることができた、そして答えてくれた。
何度も手を繋いでキスをして、身体を重ねた。
このかけがえのない4年の月日が、神様がくれた最後のプレゼントだったのかもしれない。
だから、今度は陣平くんが。
生きられなかった時間を、確かに生きてほしい。
明日も朝起きて、お腹が空いたら食べて、笑って、怒って、明後日も、明々後日も
30歳になって、40歳になって、歳を重ねてほしい。
生きてほしい
生きて
「相変わらず、ミコトは陣平ちゃんのこと大好きだねえ」
ふとその声が聞こえ、わたしは目を開けた。