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【R18】evermore 【DC/松田陣平】

第52章 愛




処置に当たる藍沢の顔を見ると、いつもはいけ好かねえほど余裕で冷静な奴が、必死になって心マを繰り返している。

その表情が、絶望的だと言うことを表しているようで、俺は思わずミコトの手を握った。


「なあ…嘘だろ…?ミコト…
お前…今日、美味いもん作って待ってるって約束したじゃねえかよ」


だんだんと、現実を理解しつつある俺。

ミコトの手を握る手が震えて、一瞬ミコトが目覚めたのかと思ったが、震えていたのは俺の手だけだった。


萩原と同じ犯人に同じ方法でミコトまで奪われるのか…?

やっと、やっと萩原の仇を取れたって言うのに…
爆弾犯を捕まえ、法の裁きを受けさせられると言うのに…


「おいミコト!!っ…頼むから…」


一つも力が入っていないミコトの手を、折れるぐらいぎゅっと握った。
いつもなら、陣平くんいたいよー!と言いながら笑うミコト。
けれど今、その笑顔はどこにも無い。


「…開胸して大動脈を遮断して止血する。
メスくれ」

「はい」


ミコトの胸にメスが当てられた時、俺の目から涙が溢れる。


「お前に、愛してるって、まだ…言えてねえ」


流れた涙が地面に落ち、パタパタと音を鳴らす。
それと同時に絞り出すような声でそう呟いた。


どうしてだ。
萩原が死んだ時、あれほど後悔したのに。
大事なことは、生きてるうちにちゃんと伝えねえと一生後悔することになる。と。

なのに俺はまた、大切な言葉を伝えそびれたままミコトはいなくなっちまうのか?

ミコトはあんなに俺に伝えてくれていたのに。

そして俺にあれだけ「いなくならないで」と言っていたくせに、お前がどっか行くのかよ。

ふざけんな…


「お前がいない世界に俺がいる意味なんてねぇんだよぉっ!」


ミコトの手を全力で握りながら、俺の叫びが虚しく院内に響いた。



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