第51章 死なせたくない人
わたしが爆弾を発見してから数十分後、
爆発物処理班が到着し、解除がスタートした。
隊員の話によると、盗聴器の類のものはこの爆弾からは見つからなかったようだ。
また、今のところ他のどこかで爆弾が爆発したとの情報は入ってきていないらしく、どうやら陣平くんも無事みたい。
しかし、解体中はいつ爆発してもおかしく無い。
外来に来ていた周辺の人間は、病院側主導で避難が開始された。
「外来、他の棟に移しておいて良かったですね。
人がそもそも少ないから、避難も時間がかからずスムーズでした」
「そうだな。
俺は、向こうを見てくるから、萩原はフロアに誰も残っていないか確認してくれ。
確認が済んだら、お前もすぐに避難しろ」
「わかりました」
藍沢先生はそう指示をすると、向こうに走って行った。
わたしは言われた通り、このフロアで逃げ遅れている人がいないかの最終確認を始めた。
それにしても、盗聴器を仕掛けてなかったなんて。
もしあの爆弾をトイレの利用者が見つけて通報したら…とか、考えなかったんだろうか。
毎年11月7日に予告状のようなものを送るぐらい用意周到な犯人が…
そんな疑問を抱きながら見回りをしていた時だった。
ふと、消火栓の方から赤い光がチカチカしているように見え、ゆっくりとそこに近づいた。
「なに…?」
消火栓をゆっくりと開くと、目に飛び込んできたのはさっき多目的トイレで見たものと全く同じタイマー式の爆弾。
「っ…!!?」
爆弾は、二つあった?!
すぐに処理班の人に知らせないと…!
そう思い、多目的トイレで作業をする処理班の人たちに報告しようとその場を立ち去ろうとした時、廊下の奥から子供の泣き声が聞こえてきた。
「うぇえ…」
見ると、小学1年生ぐらいの女の子が泣きながらフロアを歩いている。
「どうしたの?」
「ママとはぐれたの…」
どうやら、さっきの避難指示騒ぎの時に、母親とはぐれてしまったようだ。
「そっか、じゃあお姉ちゃんと一緒に、ママのところにいこう?」
「うん!」
今あの爆弾が爆発したらヤバイ。
そんな嫌な予感が頭をよぎり、わたしはその女の子を抱き抱えて一目散に逃げようと走り出した。
その時