第6章 もしも命が描けたら
ある日ふと思った。
死んでしまいたいって。
死んでしまえたら、お兄ちゃんにも陣平くんにも会える。
そしたら、お兄ちゃんに本当は大好きだったよと伝えることができるし、陣平くんがわたしに何を言おうとしていたのかも聞くことができる。
我ながら、名案だと思ったんだ。
何日も何も食べていない身体で、わたしはフラフラと外に出た。
大学の一番高い館の屋上へと向かうと、ちょうど夕暮れ時の空がフェンス越しに見えた。
ゆっくりとフェンスに手をかけて街を見下ろすと、夕暮れに染まった街が妙に綺麗に見えた。
怖くない。
陣平くんたちがいるんだから、むしろ楽しいに決まってる。
もう、疲れたから。
もう全部、忘れてしまいたい。
終わりにしたい。
そう決意して、柵を飛び越えようと足をかけた。
身を乗り出したその時
「?!」
突然大きな向かい風がびゅうっと吹いて、わたしの身体はそのまま屋上の方へ押し戻された。
まるで、陣平くんとお兄ちゃんが止めているみたいに思えて、わたしは涙が溢れる。
「どうして…」
どうしてわたしは生きていて、陣平くんたちが死んだの?
わたしと、彼らを分けたものは一体なに?
その場で泣き崩れていると、不審を察知した警備員に取り押さえられ、わたしは病院に運ばれた。