第51章 死なせたくない人
多目的トイレのドアを開けた先の視界に入ったものは、大きなデパートの紙袋。
まさか…
そう思い、そっと足跡を立てずに近づいて中身を確認すると、大きいプラスチック状の物体に時計のタイマーがついている。
スケルトンになっている物体の中にはカラフルなコードが張り巡らさらていて、ドラマとか映画でよく見る「爆弾」そのものだ。
見つけた…!
思わず声が出そうになるのを間一髪のところで抑えた。
もし盗聴器が仕掛けられていたらその場でアウトだからだ。
わたしはそっと多目的トイレを出ると、ドアに使用禁止の貼り紙を貼り、通路を出たところで藍沢先生にピッチを飛ばした。
「はい。藍沢だ」
「先生!ありました!
警察に通報と院長に報告を…!」
「本当にあったのか…
どこにあった?」
「小児科外来の…多目的トイレです」
「小児科…犯人は相当なクズだな。
すぐに連絡をする。外来は受付中止だ。」
「っ!でも、もし変な動きをして犯人にバレたら!」
「なら、別の棟の診察室を使う。
方針が固まり次第、お前にも共有するから少し待っていてくれ」
「わかりました」
とにかく、あとの段取りは藍沢先生に任せよう。
警察が来て、解体作業に入りさえすれば、きっともう大丈夫。
陣平くんは今どこにいるんだろう…
まさかもう、あの観覧車に乗ってる…?
お願い…間に合って…お願い…
祈るしか、わたしにできることはなかった。
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