第51章 死なせたくない人
佐藤が何度も俺の名前を呼んでいたことは気付いていたが、俺はそう言って半ば強引に電話を切った。
3秒前に表示されたヒントでもう一つの爆弾の在処を特定し、佐藤にメールで連絡する。
指先の器用な俺でもギリギリだろうな。
つまり、メール送信後に解体する時間は残ってねえ。
それにしても、俺もお前も同じ人間に殺られちまうとはな…
萩原。
馬鹿だな俺達は…
そして俺は、徐に胸ポケットに入れていたタバコを取り出し咥え、火をつける。
ゴンドラの中に禁煙という文字がデカデカと書かれているのが目に入ったが、今日ぐらい許してくれ…
だって、こいつを吸えるのはこれで最後になるんだからな。
二つ目の爆弾の場所はどこかの病院。
ミコトがいる、米花中央病院の可能性も十分にある。
爆弾が仕掛けられている場所に、ミコトがいるかもしれねえ。
自分の命とミコトの命。天秤にかければどちらが大事か、考えるまでもなかった。
目を閉じて、ミコトと最後に交わした会話を思い出した。
電話でキスしてって、訳のわからねえ我儘にまんまと乗せられた俺。
受話器の向こうから、ミコトの幸せそうな「おやすみ」が聞こえてきた時、愛しいと心底思ったんだ。
ミコト…悪いな…お前を幸せにするって言ったのに、果たせそうにねえな。
ならせめて、伝えそびれた言葉を伝えよう。
そう思い、俺はミコト宛にメールを作成した。
真っ白なその画面に、文字を打ち込んでいく。
愛 し て