第51章 死なせたくない人
松田side
朝の朝礼が終わりしばらくした頃、捜査一課の執務室に目暮警部の怒号が響き渡った。
「パ、パス!?何を言っとるんだね松田くん!」
「悪ぃな、警部さん
俺は今日、ここで待ってなきゃいけねえんだ…
所轄からジジイの被疑者をここに連行するぐらい俺抜きで出来るだろ」
「し、しかしなぁ…、佐藤くんも何とか言って…」
「警部。すみませんが私もパスです」
「さ、佐藤まで!?」
出勤しているというのに仕事を放棄する俺と佐藤を見て、目暮警部がほとほと困ったようにため息を吐いた。
それもそのはず。俺の自由気ままな勤務態度はいつものことだが、これまで真面目に職務を全うしてきた佐藤がボイコットとは、初めてのことだ。
そんな俺たちに再度異論を唱えようとした目暮警部だが、まさにその時白鳥刑事が送られてきたFAXの紙を持ってやって来た。
俺が心待ちにしていた、萩原との約束を果たすための始まりの合図。
「警部!また今年も送られて来ました!」
「ああ…例の数字のFAXだろ?」
来た…!と、佐藤も目の色を変え、俺はサングラスの下でひたすらにそのやりとりを睨んだ。
「で?今年は何番だね?」
「そ、それが今回は数字ではなくて…」
そう告げた白鳥刑事がFAXに書かれていた声明文を読み上げた。
=
我は円卓の騎士なり
愚かで狡猾な警察諸君に告ぐ
本日正午と14時に我が戦友の首を弔う
面白い花火を打ち上げる
止めたくば我が元へ来い
72番目の席を空けて待っている
=
円卓の騎士…
72番目の席…
72の席がある円卓…
杯戸ショッピングモールの大観覧車か!
すぐにそう推理した俺は、爆発物処理に必要なものを詰めたバッグを肩にかけた。
「松田くん?!どこかわかったの?!」
「円盤状で72も席があるっつったら
杯戸ショッピングモールの大観覧車しかねえだろ」
俺のその言葉にハッとした佐藤は、すぐに車のキーを手に取り警部に告ぐ。
「警部!現場へ急行します」
「お、おい待て!イタズラじゃないのかね?!」
「違います!…ここで、何かが起こる…
早く行って止めないと!」
いつも従順な佐藤が頑なに自分の我を通すのが珍しいと思ったんだろう。
目暮警部は白鳥刑事を始め、数人の部下を引き連れて俺たちと一緒に現場へ急行した。