第51章 死なせたくない人
米花中央病院。
まだ外来も始まっていない朝の8時。
わたしは院内の爆弾捜索を開始した。
陣平くんが殉職したのは11時59分。
それまでに、なんとしてでも爆弾を見つけないと。
そう意気込んであらかじめリストアップしておいた設置場所候補に目を通した。
さすが都内でも有数の総合病院。
施設や敷地自体が巨大ということもあり、リストアップしている候補地だけでも100を超えている。
そしてこの中に必ずあるという保証もない。
「とにかく、この中にある可能性に賭けよう。」
そう自分に言い聞かせて捜索をスタートしようとしたとき、ちょうど脳外科の医局に藍沢先生が出勤してきているのが見えた。
「藍沢先生」
「…おはよう。今日だな、確か」
「はい…もし、爆弾を見つけたらすぐに藍沢先生のピッチに連絡します」
「わかった。
俺は今日は外来だから、緊急オペが入らない限り動ける。」
真剣な顔をしてそう言ってくれた先生。さっそく仕事を向かおうとする彼を、わたしは思わず呼び止めた。
「…先生」
「ん?」
「信じてくれて、ありがとうございます。
普通、こんな話信じないですよ」
1人じゃきっと準備万端に今日を迎えることはできなかった。
藍沢先生がわたしを信じてくれたおかげだ。
「まだ半信半疑だよ。」
素直じゃない先生は、そんなことを言いながら缶コーヒーを啜った。
わたしは先生にぺこりと一礼をして医局を出ると、犯人が盗聴器を仕掛けていることも考慮して、慎重に捜索を開始した。