第50章 11月6日
松田side
爆弾は残り数秒のところで解除に成功した。
はずだった。
安堵したのも束の間、ショートしたと思われた爆弾のタイマーが復活し、爆弾装置の左右にあった青とピンクの液体が流れ始めた。
どうやら遠隔操作で強制的に爆弾のスイッチが押されたらしい。
一瞬、マジで死ぬかと思ったが、萩原との過去を思い出し咄嗟の判断でそれを応用した俺。
ギリギリセーフでこの難解な爆弾を今度こそ解体することが出来た。
この件は公安が処理すると降谷が言っていたから、俺は後処理を任せて警視庁へと戻った。
俺に取っては、別に手柄がどの部の物になろうとどうでもいいからだ。
電車を乗り継ぎ、桜田門から警視庁の駐車場で待つ佐藤の車へ向かう道を歩いている時、警視庁の門前でよく見知った顔が立っている。
「っ…陣平くん…!」
「ミコト…。どうした?何でここに」
あ。そういやぁ、こいつに電話で爆弾解体中だって言った後一方的に切っちまったな…
バタバタして忘れてたぜ…
と、どう言い訳をしようか瞬時に頭を回転させていると、ミコトは目に涙をありったけ溜めながら俺に向かって走ってきた。
「陣平くん!!!」
そして、俺の腕の中に縋るように抱きつくミコト。
心なしか、小刻みに身体が震えていた。
「悪かったって…電話、切ったまま掛け直すの忘れてたんだ。ちょっと立て込んでてよ」
「無事で良かった…本当にもうダメかと思った…」
「大袈裟だな。俺が死ぬわけねえだろ?」
何て、本当はマジでヤバかったんだが、それを言うとミコトはもっともっと心配するだろうからやめた。
宥めながらミコトの髪を撫でてやっても、ミコトは俺から離れようとしない。
妙だな…いつもはすぐに落ち着いて我に帰るのに。
「…陣平くん…」
「ん?」
ミコトは俺の胸に顔を埋めたまま口を開いた。
表情が読み取れないまま、俺はどうした?と首を傾げる。
「行かないで…帰ってきて…」
「帰ってきてって…」
「うちにいてよ…今日これからと明日が終わるまで、うちにいてわたしのことずっと抱きしめてて…」
意味がわからないこのワガママに、俺は困り果てながらもミコト頬に手を寄せてこっちを向かせた。