第50章 11月6日
病院でのボランティアを終えたわたしは、早速爆弾が仕掛けられそうな場所を偵察していた。
脳外科病棟の外来フロアトイレにも、巡回中のポップを貼り付けて回っている時、ちょうどオペを終えた藍沢先生が目に入る。
「あ、藍沢先生!」
「何してる?こんなところで」
「これ。爆弾が仕掛けられそうな場所を少しでも絞ろうと思って」
そう言って警備員巡回中のビラを見せると、わたしの作戦を見破った藍沢先生がなるほど。と言いながらそれを取った。
「わざわざ作ったのか、これ」
「はい!」
「で、これを貼らない場所を爆弾が仕掛けられる場所としてマークしておきたいって?」
「さすが!頭いいですね!藍沢先生!」
わたしの作戦、実はいい感じなんじゃ?と、ニコニコしながら返事をするわたしに、先生は続けて尋ねた。
「というか、萩原の彼氏は警視庁の爆発物処理班だったんだろ?」
「そうですけど…」
「だったら、彼氏に聞かなかったのか?
爆弾が仕掛けられそうな場所」
「………あーーー!確かに!」
陣平くんからもお兄ちゃんからもその類の話は聞いたことがない。
2人とも、家で仕事の話をほとんどしない人だから…
とは言え、その道のプロだったわけだから、「いつもどんなところに仕掛けられてたの?」って、軽くでも聞いておけば良かった!!
なぜ気づかなかったのか!と落胆するわたしに、藍沢先生は呆れた顔して言う。
「まあ、問題の日は明日だろ?
まだセーフだから、聞いてみれば?」
「そうします!!陣平くん、電話出るかな…」
今日、明日の彼は多分ものすごく忙しいだろうから、そもそも電話に出てくれる可能性も低い。
ダメ元でわたしは彼に着信を飛ばした。
プルルルル…プルルルル…