第50章 11月6日
よく考えたらそうか。
思えば俺もミコトと付き合っていなかったら、疎遠になっていたかもしれねえな。
萩原がいないんじゃ、ミコトに会う口実が見つからなかっただろうから。
返事をしないでいる俺に、諸伏が心配そうに尋ねた。
「まさか…上手くいってないのか?」
「いや?その逆。
俺、結婚するわ」
「「「け!?!結婚!!?」」」
ヤケにあっさりとしたカミングアウトとは対照的な3人のハモリ。
まさかあの松田が…と言いたげな視線が3人分送られてくる。
「んだよ、揃いも揃ってその目は」
「結婚って、いつ!?」
特に、いつも冷静で何事にも動じないゼロにしては珍しく驚いてるようだ。
「ミコトが大学を卒業したら。
医者になって本格的に多忙になる前に籍だけは入れてえと思ってる。
挙式はまだ先だろうな…
まあでも、もう両親にもOKもらってっから、同期組で俺が一番乗りで既婚者ってワケ」
ふふん。どーだ、参ったか。
と、謎に威張る俺を3人はぽかーんと口を開けて見ている。
かと思えば、3人全員が一気に俺に抱きついてきた。
「おめでとう!!松田!」
「めでたい!!めでたいなあ!!」
「まさか、あのヤンチャな松田が妻帯者に!」
「うおっ!!お前ら…離れろよ!暑苦しい」
あぁ、久しぶりだ。
降谷零がいて、諸伏景光がいて、伊達航がいて
そして、萩原研二がいる。
あの頃を思い出して、鼻の奥がツンとした。
なあ萩原。
お前は確かにここにいるよな。
姿は見えなくても、お前は俺たちの心の中に生きてる。
俺たち4人が集まれば、必然的にお前を感じることができる。
お前のあの憎たらしいぐらいにハンサムで人たらしの笑顔を、すぐに思い出せる。
これからも毎年こうして、ここにみんなで集まるからよ。
ジジイになっても、ずっと。
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