第50章 11月6日
そして2時間後
渋谷にある月参寺へタクシーで向かったわたし。
寺の住職に挨拶をして墓へ入ると、萩原家之墓と書かれた墓前の前で足を止めた。
買ってきた白と黄色の花を添え、
「お兄ちゃん…いよいよ明日。
陣平くんの命日だよ」
そう話しかけながら、水をかけ、線香をたむけて手を合わせる。
もしかしたら、お兄ちゃんの時のように結局同じ結果になるのかもしれない。
もしかしたら、陣平くんが生きる代わりに誰かが身代わりになるのかもしれない。
もしかしたら、彼が生き延びる世界線にわたしは存在出来ず元の時代に帰されるのかもしれない。
どうなるのか全く予想はつかないけれど、わたしはほんの少しでも可能性があるならそれに賭けたい。
「見守っていてね、お兄ちゃん」
そう語りかけると、わたしは寺を後にした。
陣平くんは、同期のみんなと午後に来ると言っていた。
彼はお兄ちゃんに何を話すのだろうか。