第50章 11月6日
あぁ。陣平くんにはちゃんと伝わってるんだね。
言葉にしなくても、わたしの心が全部透けて見えてる。
わたしは彼の背中をぎゅっと抱きしめ返しながら笑った。
「8日、何食べたい?」
「カレー」
「カレーなの?もっと良いものにしようよ!」
「お前のカレーが1番好き」
そう言った彼は、わたしの頬にキスをして髪をくしゃくしゃに撫でた。
「行ってくる」
「うん。いってらっしゃい」
わたしが笑顔になったのを確認した陣平くんは、一度も振り返ることなくまた角を曲がってエレベーターへ向かった。
「明日、必ず成功させて、8日に今までで1番美味しいカレー、作ってやるんだから」
そう呟いたわたしは、自分の準備を進めるため部屋へと戻っていった。
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