第6章 もしも命が描けたら
次の日
11月7日は、秋晴れだった。
朝にお兄ちゃんのお墓参りを済ませたわたしは、帰宅後には勉強机に座り、参考書と睨めっこをする。
黙々と問題を解いては答え合わせをして、ノートをまとめて…と集中していたとき
突然携帯が鳴った。
12時になる少し前。
ん?と取り出して見ると、陣平くんからメールが一通。
「ミコト、頑張れよ」
それだけ書いてた。
頑張れって、なんで今?
ふふっと笑いながら携帯を閉じて、さあもう一踏ん張り勉強だ!と机に向かった。
その時、陣平くんに名前を呼ばれた気がしてハッと辺りを見渡した。
「ミコト」
確かに、あの大好きな声でそう聞こえたのに、部屋にはわたしだけしかいない。
陣平くんのこと好きすぎて、ついに幻聴が聞こえるようになったの?
はは…と自分に呆れながらまた問題集に目を落とした時、
突然わたしの携帯が鳴った。
今度は電話のようで、発信元はお姉ちゃん。
お姉ちゃんからの電話は久しぶりだった。
「もしもしお姉ちゃん?
久しぶりだね!!」
「ミコト…」
姉は小さな声でわたしの名前を呼んだ。
この声、聞き覚えがある。
忘れもしない4年前の今日だ。
お兄ちゃんの訃報を聞いた電話で、お姉ちゃんは全く同じ声を出してた。
ドクン…ドクンと、心臓が嫌な音を立てて鳴り出す。
「ミコト…陣平が、殉職した」
その瞬間、わたしの手の力が抜け、携帯が滑り落ちた。
カシャンッ…
と、床に携帯が落ちる音と同時に
時が止まった気がした。