第49章 カウントダウン ☆
同じ湯船に浸かると、ミコトと俺の身体が容易に比較出来て、ミコトの華奢さが際立つ。
不意にミコトの二の腕を突いてみると、前より肉が薄くなった気がした。
「お前、ちょっと痩せた?ちゃんと食ってんのか?」
「陣平くん、よくわかるねぇ!」
少しの体型の変化に気づく俺を、目を丸くしながら驚くミコト。
そりゃ気付くだろ…
ミコトのことばっかり見てるっつーのに。
そう心の中でツッコミながら、俺はシャワーを手にしてミコトの頭に湯をかけた。
「わっ!なにするの!」
「頭洗ってやる。上向いてー」
そう言うと、ミコトは大人しく上を向く。
んっとに、怖いぐらい俺に従順だな…こいつは。
自分の彼女が自分にベタ惚れだと、自信過剰にも実感しながら俺はミコトの髪にシャンプーを泡立てた。
「ねえ、陣平くん」
「んー?」
「わたしのこと好き?」
「なんだよ急に」
突然そんなこと聞かれて、俺はついはぐらかした。
好き
って言葉、俺は元々言うの苦手だったんだよ。
自分がその気じゃない時に言わされようとすると、つい逃げたくなる。
「好きじゃないの?」
「こんな頭洗ってる時に言わせんなよ。恥ずいだろ」
照れ隠しにそう言うと、ミコトは鏡で俺が顔を赤くしているのを見て、嬉しそうに言った。
「…わたしはね、陣平くんのこと大好きなんだ」
その顔が何故か妙に頭に残った。
けれど俺は、やっぱり羞恥心の方が勝ってしまい、ミコトにわざと乱暴にシャワーを浴びせながら返事をする。
「知ってるって…そんなこと、とっくの昔に」
好き?と聞かれると、何故か言いたくなくなる。
そのくせ、俺が心から好きだと思った瞬間は、伝えずにはいられない。
こんな天邪鬼な俺は、いつかなんかのバチが当たりそうだ。