第49章 カウントダウン ☆
一度集中すると、周りが一切見えなくなるのが俺の長所でも短所でもある。
ふと時計を見ると、定時を5分オーバーしていて俺は思わず座席から立ち上がった。
「っ!!」
なんだよ…5分過ぎてるじゃねえか…!
時間ぴったりで終わる気満々だった俺は、自席を片付ける余裕もなく、慌てて警視庁を飛び出した。
電車に飛び乗ると、持ち前の器用な指先でミコトにメールを打つ。
「今から帰る。晩飯、何か買って帰るか?」
ミコトはボランティアと国試の勉強でこのところ夜遅くまで起きてることが多く、ミコトの手料理をしばらく味わえてねえ。
まあ、仕方ないか。
俺はミコトの料理は大好きだが、それを強制しようとは全く思わない。
極論、腹が膨らめばなんでもいいし。
最寄駅の惣菜屋でも寄るか…と、考えを巡らせていると、ミコトから返事が届いた。
「今日はわたしが作るから買わなくていいよ」
そのメールを見て心が躍る。
久しぶりのミコトの飯だ!!!
けど、あいつ忙しいのに平気なのかよ…
電車に乗ってる他の乗客は、俺のこの百面相を見て心で笑っていそうだ。
まあ何にせよ、今日は帰ってミコトの料理を食べ、その後一緒の時間を過ごせる。
久しぶりの甘い時間になるかもしれない。
そう思うと無意識に心が躍った。
俺にとってミコトは、もはやただの婚約者じゃない。
生きていく上で必要不可欠な栄養素みたいだ。