第48章 Marry ☆
誰か呼ぶかよ。
と言い返そうとした時、萩原母が仏間に生ける花を俺に渡しながら言った。
「ほら、2人で研二にも報告したら?」
「そうだね!お兄ちゃん喜ぶね!行こ?」
ミコトは嬉しそうに笑って俺の手を引き、萩原の遺影の前に2人で腰を下ろした。
騒がしいリビングのすぐ隣にある仏間なのに、ここに座るとなぜか気持ちが落ち着く。
けど、萩原は寂しいだろうな。
隣の部屋からみんなの話し声がずっと聞こえているんだから。
おしゃべりが好きだった萩は、きっと俺も混ざりてぇ!なんて言って拗ねてるだろう。
なあ萩原。
お前が死んで、もうどのぐらい時間が経っただろう。
ようやく、ミコトにちゃんとプロポーズをしたんだ。
と言っても、思い描いていたプロポーズよりかなり忙しないものだった。
本当なら、萩原の仇を取った後に、例えば夜景の見えるレストランとか、トロピカルランドの城の前とか、そんないかにもミコトが喜びそうなプロポーズを考えていたものの、そこまで待てなかったと言うのが正しい。
この話、面と向かってお前にしたかったよ。
どんな反応しただろうな。
思えば俺は、どんなときもふとした時に「萩原なら」と考える。
萩原ならどうする?
萩原ならなんて言う?
萩原なら?
この癖は多分一生治らない。
萩原。
会いてえな。ものすごく。
叶うことなら、萩原がいる世界でミコトを幸せにしたかったよ。
けどそれはもう叶わないから、せめて。
せめて、お前の仇は俺が取る。
数ヶ月後の11月7日に、必ず良い報告をしに来るから、待っていてくれよな。
そう萩原に語りかけ合掌を解くと、ミコトが目を丸くしながら隣で俺を見つめていることに気づいた。
「?なんだよ」
「お兄ちゃんと何話してたの?」
「貸してたエロ本、早く返せって話してた」
「さっ、最低!!」
そんな嘘を間に受けて、むっと顔を膨らませて俺をはたくミコト。
萩原家への結婚報告は、こんな感じで終始ゆるっとした雰囲気で幕を閉じたのであった。